モリアオガエルに紫外線は必要か
さて今回は『モリアオガエルに紫外線が必要かどうか』問題です。
ここで基本をおさらいしておくと、必要かどうかというのは「ないと死ぬか」という論点ではないです。
そういう意味では、日光浴しなくても死なないので必要ないことになりますよね。
昼行性のカナヘビやトカゲは日光浴しないと途端に「くる病」にかかります。
彼らは紫外線からビタミンDを合成しているので(人間もそうですが、人間は食事からも補給できます)、紫外線を浴びないとカルシウムとビタミンDが体内で結合して骨を作ることができずに骨の変形、神経のけいれんが起こり、やがて死に至ります。
だから昼間動く生き物には日光浴は絶対必要なのです。
でもカエルやヤモリといった夜行性の生物は日の出ている間は物陰に隠れて寝ていて、夜獲物を探して活動するので、日の光を浴びる時間はほとんどありません。
骨の形成や神経伝達に必要なビタミンDは体内合成するので、生きるための紫外線は必要ないのです。
だからカエルを飼うときに楽、なんたって楽!なことの一つが紫外線ライトがいらないということなんです。
紫外線ライトは高い!
電気を食う!
ライトの買い換え寿命が短いからお金かかる!
これは大きいです。
そんなわけでカエルには日光浴は必要ない、むしろしないほうがいい、なんて人までいらっしゃいます。
まあ、へたに日光浴なんて夏場にさせるとやけどして死なせかねないですから反対する人のおっしゃることもわかります。
しかしながら、モリアオガエルのマニアさんたちは綺麗な緑色にくっきり浮かぶ斑の野生のモリアオガエルに憧れを抱き、ハートの目で見つめます。
人慣れせず、人が寄っただけでバタバタ逃げ回る野生モリアオガエルが高値で売れたりするわけです。
(繁殖個体がなかなか繁殖に至らないというのもワイルドを欲しくなる理由のひとつだとは思いますが。)
それでみなさん一所懸命ワイルドの色柄に近づけようと餌に色々添加したり工夫していらっしゃいます。
かくいう私もそうです。
カロテン、リコピン、アスタキサンチン、スピルリナetc…色々混ぜるわけです。
でも、基本に立ち返って考えてみようと思ったのです。
野生のモリアオが暮らしている状態に100%は無理でも、少しでも近づけられればより野生に近い色が出せるのではないかと。
※追記:紫外線については研究中ですが、モリアオガエルのような緑色の樹上性カエルの場合、紫外線は必須かもしれないと考え始めています。
色揚げの問題だけでなく、緑色には意味がありそうですし、完全夜行性というわけでもなさそうです。
飼っている感触としては紫外線を当てていない子の方が寿命が短いような気もします。
このあたりは「カエルブログ」で引き続き検証していきたいと思っています。2024/02/25
モリアオガエルの野生環境
それでまず、モリアオガエルがどんな生活をしているかです。
特徴としては、
1. 行動範囲が広い!
案外行動半径は広いらしいです。その中で餌を探し回るから筋肉も発達し、お腹も空くからまた食べる、を繰り返してあれだけでかくなる!
2. 樹の上に住む
なんつったって「モリアオガエル」ですからね。
森の青蛙という名前の通り、水辺の高い樹の上で暮らしてます。昼はとにかく木陰にじっとしているみたいで、水分補給や狩りのために夜になって下りてくるようです。
下りるとしても数日に一度とかじゃないのかなぁ。
すくなくともうちのモリアオ達は毎日は下りてきません。
まあ1はなるべく広いところで飼いましょう、くらいのことしかできないです。
さて問題は2です。
ワイルドの個体の目を見ていて思ったのです。
瞳孔?てカエルもいうのかな?
がやたら細い。猫みたいです。
暗いときも細い。
それはつまり昼木陰にいるときもまぶしいのではないか。
実はモリアオガエルは昼間紫外線を浴びているのではないかと。
そう考えて紫外線について調べてみることにしました。
紫外線の基本
太陽光に含まれる紫外線にはUVA、UVB、UVCの3種類ありますが、UVCは地上まではほとんど届きませんので、除外します。
UVAはサンタンといって皮膚を黒くするもの、UVBはサンバーンといって皮膚を赤くさせます。
海水浴に行って日に焼けて赤くなるのがサンバーン、毎日半袖で買い物に行っていて、気がついたら腕の部分が黒く日焼けしているのがサンタンです。
サンバーンは皮膚の表面の表皮を火傷させ、特に8月をピークとして4月から9月に高くなるので、日焼けは夏の物と考えがちですが、サンタンは1年を通じて降り注ぎ、皮膚の内部である真皮まで到達して皮膚にダメージを与えます。
ダメージを受けた皮膚は再生が難しくなり、シミ、そばかす、深いしわ、最悪の場合皮膚がんを引き起こします。
サンバーンは木陰やビーチパラソルで予防できますが、サンタンは物質を透過する強力な紫外線で、少しの木陰なら通してしまいます。
紫外線というと夏の日当たりの良い場所を想像してしまいますが、じつは直射日光を100とすると、曇りで50%、雨でもなんと30%は紫外線が降り注いでいるのです。
また、木陰でも50%から場所によっては80%届いているそうです。
この紫外線を含む日光というのは、地表を温め明るく照らす生き物の命の源ですが、両刃の剣で、布団干しや虫干しでもわかるようにカビや菌を殺すほど強い力を持ち生物にダメージを与えます。
光合成をして生きる植物でさえも、光をもらうメリットと同時に植物にとってのメラニン色素、葉緑素で体を緑にすることで紫外線のデメリットから自分を防御しているのです。
ですから日当たりの良い場所に生える植物の方が緑色が濃くなります。
私たち人間も紫外線の弱い北欧の人はメラニンが少ない白い肌、アフリカなどの紫外線が強い地域の人々はメラニン色素を大量に皮膚に備えることで防御力を強化する褐色の肌をしていることからもわかりますよね。
カエルの体色
そう考えると野生のモリアオガエルの体色が綺麗な緑色で、室内で飼う繁殖個体のモリアオガエルがケージ内にポトスやらなんやら緑の植物を植えてみても、やっぱり柔らかいパステルグリーンなのには紫外線が一役買っているのではと思われてなりません。
モリアオガエルは緑一色がほとんどですが、地域によってはスポットが出る遺伝子を沢山持っている所もあります。
特に静岡県の伊豆半島産モリアオガエルは濃い緑の地色に全身に斑の入るフルスポットと言われる個体がいて、マニアの間では非常に人気があります。
深い森に生息しているので保護色として自衛隊の迷彩柄のように進化したのだと思いますが、その卵から孵ったオタマジャクシを持ち帰って育ててもやはり柔らかい色や斑もあまり出なかったりしてしまうことが多く、遺伝子だけの問題ではないようなのです。
それでせっかく生まれた子ガエル達をなんとか両親に似た綺麗なスポットガエルにするべく日光浴をさせてみることにしました。
モリアオガエルに日光浴
今回実験に参加してもらうのは、この写真の両親から生まれた子ガエルたちです。
二匹とも伊豆半島産のフルスポットの綺麗な柄で地の緑も鮮やかです。
子ガエルは上陸後3ヶ月経過の10月頃から日光浴にチャレンジしてもらいました。
本当はもう少し早くからやりたかったのですが、今年は猛暑がひどくて、暑さで子ガエル達が死んでしまわないか心配で外に出せませんでした。
これはホームセンターなどで売っている簡易温室の外側のビニールを剥がして樹脂ネットでDIYしたものです。
下20センチはダイニングテーブルに敷く厚めのビニールを張り(コオロギが逃げないため)上は目の粗い樹脂ネット(トリカルネット)を張ってあります。
目は1センチあるので十分日光を取り入れることができます。
下には水入れと避難用のシェルターを置き、上は突っ張り棒に人工の観葉植物を巻き付けた物をぶら下げておきました。
この状態でできるだけ毎日15分から曇った日なら1時間程度日光浴を一ヶ月半している所での結果です。
これが11月半ば、日光浴直後に室内に取り込んだ二匹です。
4.5センチ前後の2匹ですが、子ガエルにしてはかなりくっきり斑が出ています。
写真では少しわかりにくいですが、左の子は黒い斑の中に少し薄い茶の斑が浮いてるように見えます。
右の子はもわっとしてはいますが全身に模様が細かく出ています。
ところが、そこから2時間ほど経つと、同じカエルとは思えないほど斑が薄くなりました。
左の子は斑の位置は同じですが全体的に薄茶、右の子はもわっとした模様がなくなっています。
見比べてみると、かなり違いますよね。
結果の推論
ということで、やはり人間が室内で飼ってるカエルですから野生と同じとまでは行かないかもしれませんが、極力日光浴できる時間をふやすこと、それを続けることで明らかに体色は濃くなっていくのではないかと思いました。
子ガエルのうちに紫外線にあたる時間を多く取ることで、人間のそばかすと同じでひっこみにくくなって斑として定着するのではとも思います。
さらにケージにも緑のものを置いて保護色を助ける、餌に色素のもととなるものを添加するなども続けていきたいと思います。
余談ではありますが、冬の間は外に出せないので紫外線ランプを買って小屋の上に取り付けてみましたが、曇った日だとしても圧倒的に太陽光線にはかなわないようです。
木陰でも5分で斑が強く浮き出ますが、紫外線ランプだと変化あるのかないのかよくわかりません。
ないよりはましか・・・?
みたいな感じです。
やはり手間はかかるしつきっきりだし大変ではありますがしばらく日光浴検証を続けていくことにしました。
どうなるか、乞うご期待です!
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