今まで紫外線について書いてきましたが、その後色々調べたり育てたりしているうち、考え方が変わり、モリアオガエルにとって紫外線は非常に重要だという結論にいたりました。
今回は、では紫外線とはどんなもので、どんな役割を果たすのかについて書いてみたいと思います。
太陽光について
紫外線は太陽光に含まれる光の波長です。
まずはそこから勉強してみましょう。
太陽から発せられている光には波長があり、その波長によって地上に届く光と届かない光、また目に見える光と見えない光があります。
次の図を見て下さい。
この図の可視光線(400~770nm)は目に見える光で、この7色がプリズムのように分かれると虹になります。
この可視光線には温度はなく、可視光線の赤側の800nmから2100nmにある赤外線が太陽の暖かさを感じさせる光です。
また、400nmの紫の光側には目に見えない紫外線があります。
3種類の紫外線のうち、UVCは地上には届かないため、普段私たちが浴びているのはUVA,UVBになります。
UVAはサンタン(Sun tan)とも言われ、日焼けをしたときに肌が黒くなる現象を指します。
UVAは物質を透過する力が強いので、人の肌の内側に入り込みます。
真皮まで到達するとダメージが大きいのでメラニン色素が活発に働いて黒い粒子で皮膚を覆い光を吸収して真皮へのダメージを防ごうとして肌が黒くなります。
UVBはサンバーン(Sun burn)と言われ、皮膚表面を焼くことで火傷の状態を作るもので、皮膚が赤くなるのはUVBの作用です。
この二つの紫外線はメリットとデメリットを持ち、全面的に防御するのも、全部浴び続けるのも弊害があります。
これは人間だけでなく、太陽の恩恵を受ける地球上のすべての生き物は、太陽の恵みを受けながらデメリットだけは排除するように進化してきました。
わかりやすいのは植物です。
緑の葉は太陽光で光合成をすることによって命をつなぎ、緑色を強くすることで紫外線の害から逃れます。日向の植物の緑色は強く、日陰で育てると薄い黄緑に育つのはその理由です。
また、トマトなどの実やマリーゴールドなどの花に含まれるポリフェノール類は紫外線の防御のための植物の知恵で、それを人間が食べることで体内の活性酸素を除去できることが知られています。
紫外線の物質の透過率
さて、この太陽光ですが、室内にいるときはどれくらいの光が入ってくるのでしょうか。
ガラス製造会社のサイトなどを見ると、一枚ガラスで約50%と出ていますが、300nm以下は通さないようなので、UVBはきわどい所ですね。
また、アクリルやプラスチックの会社のグラフを見ると、良質なアクリルはガラスに準ずるものの、透明度が下がると紫外線の透過率も急激に下がり、プラケなどでは光は通しても紫外線はかなり拡散してしまうようです。
つまり、両爬類に日光浴をさせようと窓際にケージを置いても、ガラスケージだとしても50%×50%=25%しかUVAは入らず、UVBはさらに期待できないことになります。
そしてこれは窓ガラスとケージを接して置いた場合で、少し距離があったり、プラケだった場合、紫外線の恩恵かなり減ることになります。
もし紫外線がモリアオガエルにとって植物と同じように必須なのだとしたら、これは工夫の余地ありということになりますよね。
紫外線がモリアオガエルに何をしているか
では、ここで昼行性の爬虫類や両生類にとって、紫外線がどんな役割をしているかを考えてみましょう。
まず、UVAですが、前述のとおり肌の色を濃くする波長なので、カエルの色を綺麗に発色させているのはUVAだということになります。
また、日焼けした人間が皮膚の新陳代謝が活発になるのと同じで、モリアオの新陳代謝も促進され、病気にかかりにくい体を作るのではと想像できます。
また、UVBは両爬の皮膚表面のコレステロールにより吸収され、体内でビタミンDを形成します。
ビタミンDは小腸に集まり、餌に含まれるカルシウムを腸管から体内に引っ張り込む役割をするので、いくらカルシウムをダスティングしても、ビタミンDがなければせっかく摂ったカルシウムは排泄されてしまうことになります。
また、やっかいなのは両爬類のほとんどがビタミンDを食べたものから吸収することができないばかりか、餌からDを摂り過ぎるとカルシウム欠乏症と同じ病気になってしまう可能性が高いことです。
ここで付け足しておくと、添加剤にビタミンD3と書いてありますが、ビタミンDには2と3があり、2が植物由来、3が動物由来で、働きは同じなので3でなければいけない理由はありません。
何から抽出したかというだけで、総称のビタミンDのことと思って差し支えありません。
一つ違いを言うとすれば2は食品にしか含まれず太陽光では合成できないくらいでしょうか。
なので両爬類にかんしてはあまり関係ないかと思います。
さて、本題に戻ると、カルシウムは骨を作ると思いがちですが、それよりずっと重要な神経伝達の役割を担っています。
手を動かそうと思っても動かない、口を開けようと思っても開かない、体がしびれて動きが鈍く、獲物を捕まえられない、これがくる病のはじまりで、そののち骨の変形が始まります。
なので、そのカルシウムを吸収するために紫外線の中でもUVBを浴びることが重要なのです。
また、UVBは強い殺菌作用を持ち、両爬の皮膚表面に付いた細菌を殺す役割もしています。
亀の甲羅干しは体を温めるだけではなく、殺菌もしているのです。
まとめ
モリアオガエルは一応は夜行性と言われています。
でも地上のヒキガエルのような夜行性と違い、樹上性カエルは、昼間でも完全な暗いところにいるわけではありません。
高い樹の上で日中暮らしているのですから、木漏れ日の中でも相当量日に当たっているはずです。
だから野生個体の瞳孔は細いし、たっぷりのビタミンDを受け手足も長くがっちりと大きい体に育っているのだと思います。
つまり捕食は夜行性ではあるが、昼間も少しは日光を浴びる、全日性よりの夜行性なのです。
それが本来のモリアオガエルの姿なのだとすれば、完全に再現できないまでも極力日光浴を一日10分、週に1~2回でもさせてあげられればかなりの健康維持に役立つのではと思っています。
もちろんそれがなかなかできない環境の飼い主さんもいらっしゃると思います。
その場合は紫外線ランプなどを上手に使ってあげてはいかがでしょうか。
太陽光には到底及ばないのですが、ある程度の病気を防ぐことはできると思います。
ちなみに私が使っているのはゼンスイ社のマイクロUV LED灯具セットです。
まずUVの照射量が高く30㎝下まである程度は届いていること。
またUVライトは寿命が短く3ヶ月から長くても6ヶ月程度で交換しなければなりませんが、LEDなので5000~7000時間保つこと。
LEDは発熱量が少ないので熱くならないこと。ただし光に熱はありませんが灯具は熱くなるのでケージ内に設置することは不可能で、これは普通のLEDライトと同じです。
また箱の表にあるように可視光線よりUVA、特にUVBのピークが高いこと。
そして価格がリーズナブルなことを選ぶ基準にしました。
カエルに多い浮腫症候群(いわゆる風船病)の原因の一つは代謝性骨疾患、つまりクル病、紫外線不足です。
また細菌感染で発病することもあるようです。
カエルは怪我には強い生き物ですが、病気になった場合完治させることは難しく、様子をみながら悪化しないようにケアすることが基本になってきます。
そのためにはどうやって健康を保たせてあげるか、私自身も飼い主が命を預かった以上工夫してベストを尽くしたいと思っています。