我家の近所、横浜市周辺で見かけるアゲハ蝶と保護の仕方をご紹介します。
アゲハ保護のきっかけ
ずいぶん前に庭先にハーブの一種フェンネルを植えたとき、キアゲハの幼虫が大量発生したことがありました。
最初はただ物珍しく眺めていました。
なにしろ100匹じゃきかない大量の幼虫で、放って置いてもみんなチョウチョになるんだろうぐらいな・・・。
ところが減るわ減るわ、幼虫で減る、蛹になっても減る、目の前でどんどんやられていくのを目の当たりにし、こんなひらけた逃げ場のないところにフェンネルを植えた私の責任かと、生き残った幼虫を保護したのが始まりです。
保護してからもやはり死んでいきます。
すでに寄生虫にやられていたりうまく羽化できなかったり・・・。
一つの生き物を眺めているのと密着して世話するのとでは全く見えてくることが違います。
自然ってすごい!!こんなことが繰り広げられているんだ、と一つ一つの生き物を尊敬をもって見るようになりました。
保護と言っても幼虫から蝶になるまでで、無事アゲハ蝶になれたら放蝶します。
農家さんでは蝶は美しき害虫でもありますが、大きなアゲハは近年減りつつあると感じています。
たいした数は救えていませんが、家の庭を蝶道(蝶の通り道)にしてみたい方への情報編です。
アゲハ蝶の種類
あくまでもうちの近所で見かけ、今まで保護した種類に限定させてくださいまし。
そして結構ブレブレな写真や撮れてない写真もあるのでそこは追って頑張ります!!
ナミアゲハ
もっともポピュラーなアゲハです。
《食草》柑橘系一般、カラスザンショウ
ところ構わず卵を産む無防備なアゲハだと思います。
小型で生育の回転が速いせいで「数打ちゃ当たる」的な考え方かと。アゲハ初心者に向いています。
下は終齢幼虫。個体により柄や色が少しずつ違うことがありますが、足元の白い模様、背中の筋は共通。
キアゲハ
ナミアゲハと並んで育てやすい小型のアゲハです。
背中の模様がナミアゲハに比べると筋にならずぼやけています。
《食草》セリ科のパセリ、にんじん、三つ葉、フェンネルなど。
幼虫は写真の通り非常に目立つ柄で他のアゲハと大きく違います。
クロアゲハ
大型の黒系アゲハの中では比較的数が多いアゲハです。
とは言っても黒系はナミたちに比べると1.5倍~2倍生育期間がかかるので、天敵にやられると数が増えません。
なので目立たない場所を産卵場所に選ぼうと神経質に探し回る傾向があります。
写真右下は蛹と前蛹(蛹になる前の状態・ぜんよう)蛹はつのがとんがって、周りの色に合わせて変色します。
《食草》柑橘系一般、カラスザンショウ
カラスアゲハ
背中側は玉虫がかった緑色に光る綺麗なアゲハです。個人的に一番好きな種類です。
《食草》カラスザンショウ、コクサギなど
コクサギはカラスアゲハのみが食べるのでネットで買って植えています。カラスザンショウにも産卵しますが、コクサギの方が大きく成長するような気がするのと、水揚げがやたらといいのでカラスアゲハを呼びたい人はコクサギ推薦!
腹側の模様はクロアゲハと酷似していますが、尻尾の長さがカラスの方が長いです。
ナガサキアゲハ
アオスジアゲハ
黒系の中では小型の蝶ですが、青の模様が美しく人気があります。
《食樹》クスノキ、タブノキ、シロダモ等クスノキ科。
公園や街路樹として植えられているクスノキなどに産卵するので幼虫から手に入れるには庭に植えて背が高くならないように毎年剪定してください。
蛹になるときは樹を下りずにその場で蛹化するので天敵に狙われやすいです。
幼虫は終齢で美しいグリーンになり、蛹になる手前でさらに通称「メロンゼリー」色になります。
モンキアゲハ
ナガサキアゲハと並ぶ大型の黒系アゲハです。
《食草》柑橘系一般、カラスザンショウ
これもなかなかお目にかかれない種類で、来てくれると嬉しい蝶です。
羽を広げると紋付きの紋のように白い点が両羽に浮かび、飛んでいてもすぐにわかります。
幼虫はクロアゲハとそっくりですが、背中の中央の線が交わりません。クロアゲハはつながっています。
また蛹のカーブする角度はほぼ90度です。
羽を広げた写真はまた撮れたら追加します。
アゲハの育て方
1.食草を用意する
来て欲しいアゲハの食草を用意しましょう!
まずはここから。
大きいアゲハほど一匹育てるのに大量の葉がいります。
せっかく来てくれて餓死は可哀想なのでたっぷり用意しましょう。
ある程度木が育つまではネットをかけるのもありです。
食草メモ:柑橘系はレモン、ゆずなどがポピュラーです。ホームセンターで買うときは除虫剤の使われていないものを選びましょう。
蝶がみんな大好きカラスザンショウ(イヌザンショウも可)は土手や道ばたによく自生していて、とげが痛いので農家さんにも嫌がられます。「採らせてください」と言ったら変人を見る目で「どうぞどうぞ」と言われました。でも根付きはよくないし、伸びれば5メートルの巨木になるし、下手に途中で切ると枯れるしやっかいな木です。(我家では5メートル3年目に超えました)カラスアゲハを呼びたいならコクサギの方が低木で広がらず庭の隅に植えられておすすめです。
2.産卵してくれたら
普通お母さんアゲハは子供に柔らかい葉っぱを食べて欲しいので新芽のあたりに産卵します。
新芽は切るとしおれやすいので、すぐ保護したいところですが、幼虫が産まれて1~2回くらい脱皮するまでは見守りましょう。
心配なら幼虫ごとシンクの生ゴミ用のネットをかける手もあります。
3.保護する
少し大きくなって新芽以外も食べられそうなら保護します。
幼虫だけを捕ると、脱皮間近だった場合糸を出せなくて新しい葉っぱにつかまれず死んでしまいます。
幼虫の周りの葉っぱごなるべく小さい面積で取って、新しい葉にセロテープなどで貼り付けると自分で移動するか、脱皮してから移動します。
脱皮前かどうかは顔を見てください。
顔がお面みたいに前にずれて落ちかかっているみたいに見えたら脱皮直前で糸を吐けません。
4.保護環境
食草は必ず虫のかじり跡のない綺麗な物を用意してください。
これくらいいいか、という小さなかじり跡でも人の目には見えない寄生虫の卵が付いています。
私は前はメラミンスポンジなどで一枚ずつ洗っていましたが、それではほぼ取れないようです。
寄生蠅や寄生蜂は幼虫の唾液と葉のかじり跡から出る液が混じった匂いに引き寄せられて「ここに幼虫がいるようだ」と遠くからでもやってきます。
100%防ぐことは不可能ですが、とにかく「きれいな葉っぱ」を探してください。
葉っぱは残っていても2日から3日で取り替えてください。
葉の水分が減ってきて幼虫の育ちがわるくなります。
その葉を水に差しますが、コップや水差しには必ず蓋をしてください。
アルミホイルで蓋をしてそこに枝を差しても隙間から幼虫は入り込んで溺れます。
ラップでもだめです。小さな幼虫なら隙間から入ります。
私は写真のようにジャムやヨーグルトドリンクの蓋付きの容器に穴を開けて使っています。
穴より幼虫が小さい場合は使わない穴から幼虫が入らないようラップをし、輪ゴムで止めて使います。
幾度となく水没させて申し訳ない思いをさせてきたので気をつけています。
そのコップごと蓋付きプラケース、または蝶を飼うためのネットに入れます。
ネットは植木鉢ごと入れられて普段はたたんでおけるものが売られているのでそれを使うのが便利です。
5.終齢になったら
ここからは一気に育ちます。
一日3枚以上葉っぱを食べるのでせっせと用意してあげなければなりません。
数日かけて(気温や日照など蛹になるまでの日数は一定ではありません)十分な量を食べたらいよいよ蛹になる準備を始めます。
まずは水出しといって体の余分な水分をおしっこのように出します。
ただしアオスジアゲハのように水出しをほとんどしない種類もあります。
水分を出したら今までがうそのように動きが活発になります。
蛹になってからは敵からは逃げられなくなるので安全な場所を求めて走り回るのです。
また、足場としてふさわしい場所も探しています。
蝶ネットだと足場がかけやすいので心配いりませんが、プラケースを使う場合は木などを入れてあげます。
モンキアゲハは特に足場をかけるのが下手で一気に弱ってしまいます。
モンキアゲハにかんしては蝶ネットを用意してあげた方がいいでしょう。
6.蛹
良い足場をみつけたら糸かけをして前蛹になります。
そこから1日かけて蛹になりますが、不安定な場所や、蝶になってもつかまれないような場所に糸かけをしてしまって移動させたい場合でも、蛹になって1~2日までは動かさないようにしましょう。
羽化しても足がすべって落ちてしまったり、羽が伸ばしきれない場所だと飛べない蝶々になってやがて死んでしまいます。
特にプラケースの壁はすべりやすいので、そっと剥がして割り箸につけたり、剥がすのが怖いときはプラケースの壁に網戸のネットの切れ端のようなものを張って足場を作ってあげてください。
小型の子だと数日、大きい子だと二週間かかって羽化しまず。
7.羽化
羽化するとき余った水を出し、飛ぶ前にさらに水出しをします。
二度目の水出しが終わったら飛べるようになりますが、それまでは飛ぶことができないので手乗り蝶になります。
大型蝶で半日かかることもあります。
特に越冬蛹は羽化しても時間がかかります。体の温まりやすい窓際などでゆっくりまってあげてください。
飛べるようになったらさみしいでしょうが放蝶してあげてください。
雨が降っているときと夜は放蝶NGです。
雨の日でも止んだ合間なら大丈夫です。
蝶は1匹200個程度の卵を生むと言われます。
そして、卵が蝶になる確率は6/1000程度と言われています。
つまり一匹の蝶が1~2匹の子孫を必死で残していることになります。
大型の黒系はその中でも確率が低いので、蝶でいられる約1ヶ月の間に相手を探し、羽をボロボロにしながら最後まで産卵を続けます。
その命を全うできるよう陰ながら祈りたいものです。
8.蝶が死ぬ理由
まずは寄生バチと寄生バエで、さきほど書いたように葉っぱに卵を産む種類と幼虫の体に産み付ける種類がいます。
寄生虫の卵は蝶が蛹になってから卵から孵り、蛹の中で体内を食い荒らしながら育ち蛹を食い破って出てきます。
死ぬ理由の第一位はこれだと思います。
次に多いのはアシナガバチです。
アシナガバチは初夏に子育てをします。
その子供の餌として幼虫をかみ砕いて団子にして巣に持ち帰って子供に食べさせます。
根気よく葉っぱの間を飛び回って幼虫を探すので、ひらけたところに食草を植えるとほぼ全滅してしまいます。
あとは蛹になるときに力尽きたり、怪我をしたり、蛹を鳥に食べられたり、羽化に失敗したり、羽化してからもたくさんの敵に狙われます。
なにげに飛んでる蝶は大変な環境を生き抜いてきたんだなぁとしみじみ自然のすごさに感じ入りますが、でもそれは蝶を捕るカマキリにもクモにもアシナガバチさえも同じことなんでしよう。
みんな黙々と必死に生きていて、地球はそんな命にあふれているんだなぁと、思いはどこまでも広がって果てしないです。